先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み(3)

先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み(3)

プラドの作品は全部コピー!?

アーカイブの保存と公開が持つ意義として、企業の資料を保存管理し、次世代に伝えるというのはどういうことか。
つまり、「企業の歴史や企業を生み出してきた文化を」を「後世に伝えて、未来へと発展させる基盤とする。
そして、次世代社会の創造や、技術発展の可能性を広げる」と書かせていただきました。
これはいわゆる温故知新です。
古いものをたずねて、新しいものを知って、さらには発展させていくということが、資料の持つ最大のエネルギーだと思います。

会社には、老舗といわれる創業から長い歴史を持つ企業と、まだ新しい企業があります。
長い歴史を持つ企業とすれば、史料や資料を公開して人々に働きかける文化支援、つまりそれが一つの大きなバロメーターや見本になっていく面があります。
それを公開することが、文化的貢献となるメセナの要素も当然なります。
設立間もない企業は新しい技術を持っています。
新しい研究で、すき間産業に入っていく企業、それからまったく今まで知らなかったような企業もあります。

例えば、岡山には、がけなどの岩を接着剤で固定する会社があります。
そうし会社が、どういう技術でそれを可能にしたのか。
南海トラフなどが言われ始めると、そうした技術が脚光を浴びることがあると思います。
その技術はどういうプロセスで生まれ、どういった発想からできたのか。
よそに類似例はなかったのか。
そういったことを積み上げていきますと、その企業のオリジナリティーや優越性が出て来ますので、今後新しい技術にどのように着目していけばいいのかというあたりも、そこから勉強できると思います。

アーカイブを公開する、資料を公開することが大事だとさっき申し上げましたが、保存するのは大変です。
例えば、美術館の収蔵庫は重要なところですが、収蔵庫に入れていたのでは我々は絵を見ることができません。
今、フェルメールの絵画が日本に来ていますが、オランダの収蔵庫だけに入っていたら、我々はフェルメールを見ることはできないのです。
スペインのプラド美術館にはゴヤのマハなどの代表作があります。
20年ほど前、フェリぺ・ガニエ館長と話しをしたことがあるのですが、「あなたたちが見ているプラドの作品は全部コピーなんですよ。本物は全部収蔵庫にあるんですよ」と言われたことがありました。
「絵画が傷んだり、盗まれてはいけない。ですから、非常に上手な贋作を作る人たちに描いてもらったのが美術館にあるんです」と、どこまで本当か分かりませんが、そう話されてました。
それを聞いて、我々は本物ではない絵を見て感動しているのかなと思ったことがあります。

それはさておいて、例えばゲルニカなどは、重厚なガラスの壁の中に入っています。
ゲルニカは反戦的な意味を持つ絵画ですから、やはり安全に保存しないといけない。
でもやはり本物を公開したい。
反対に、ニースのシャガール美術館には自然光が入るのです。
美術館に自然光を入れるというのは、まったくのタブーです。
大原美術館が昭和5年にできたときは、自然光が入っていたのです。
今は窓がふさがれ、光による害を入れないようにしているのですが、ニースの美術館は逆手をとって、美術品は収蔵するものではなく展示するものだから、修復を前提に展示をする、と考えているようなのです。
美術の世界でもそうですから、アーカイブというのは、いかに劣化しようが、やはり公開していくことが大切だと、特に最近言われています。
それを、デジタル化が大きく後押しするものだろうと思います。

2月16日から大阪市立美術館で拓かれる「フェルメール展」。西日本では、過去最大規模だそうです。

■フェルメール展
https://vermeer.osaka.jp/index.html

 

産業考古学会理事/Business Archives Lab.主任研究員
小西伸彦


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