「先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み」(1)

「先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み」(1)

2018年10月16日に行われた第1回企業アーカイブセミナーでは、産業考古学会理事でBusiness Archives Lab.主任研究員の小西伸彦氏が「先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み」と題して講演しました。その内容をシリーズでご紹介します。

石見銀山が世界遺産になったのは……

皆さん、こんにちは。ご紹介をいただきました小西でございます。

「先進企業に学ぶ企業アーカイブ」という非常に重い課題をいただきました。
実は、産業考古学会という学会のことを後でご紹介させていただこうと思うのですが、学会でもこういったアーカイブに実際に関係させていただいていて、いろいろな業績をつくりました。
それがすぐにデジタルと結びついたものかというのはまた別の話ですが。
我々産業考古学会員には、例えば、古い建物を見て喜んだり、鉄道を見て喜ぶ人が多いのですが、そうした資料や地図や写真、すべてが研究対象になります。

石見銀山が世界遺産になった一番大きな要因は、正直に言って語られてはいないのですが、当時の石見銀が世界の銀の約半分を占めたということが、文献的に実証できたということです。
ご案内だと思うのですが、島根県大田市に中村ブレイスという会社があります。
義肢、義足を作る会社なのですが、一番有名なのは、乳がんで乳房を失った方の乳房を元の通りにお作りになっていらっしゃいます。
この事業はまったくの赤字らしいのですが、大田市出身の今70歳の中村俊郎会長が創業された会社です。
中村さんはご自身の小遣いというか給料で、銀山、銅山、また筑豊炭田で絵を描いた山本作兵衛の炭鉱画などを、全て個人で収集されました。
松江銀行の本店だった建物が倒されるということで、もったいないからと石見銀山の入口に移築し、改装し、そこをご自身の資料館になさいました。
そこにある資料は、世界的な資料です。
ヨーロッパの資料もあれば、日本の資料もあるし、アメリカの資料もある。
世界遺産を認定するICOMOS(イコモス)の人たちが来て、それに感動されて帰った後、風向きが変わったと言われています。

先日、産業考古学会の全国大会で「なかむら館」を見学しました。
「なかむら館」の収蔵品アーカイブは本になっているのですが、まだまだ3分の1もデータが取れていないそうです。
実は石見銀山は、岡山の成羽にある吉岡鉱山とも深い関係があります。
佐渡の金山とも関係があります。
たかだか100年ほど前の歴史が失われていく中、新しい事実が出てくれば、中村さんの資料をいろいろな研究者が多目的に見ていったら、さらに新しい歴史が開かれてくる。
今まで知らなかった歴史が出てくるという、非常に大きな期待を持たせてくれる資料があるのです。
これこそアーカイブだなと思いながら見てきたところです。

第1回企業アーカイブセミナー

 

産業考古学会理事/Business Archives Lab.主任研究員
小西伸彦


「先進企業に学ぶ企業アーカイブの取り組み」(2)