会社力の総合的成長につながれば

会社力の総合的成長につながれば

第二建設株式会社(岡山市北区大和町)の『岩接着DKボンド工法事例集』が完成した。
B5サイズ836ページの事例集は、急逝した前社長が書き残していた業務に関するさまざまな文書、メモなどから選び抜いて、デジタル化、そして書籍化したもの。
なぜこうした事例集をまとめようと思ったのか、同社の入江健太郎社長にその編纂の動機などを伺った。

第二建設社屋

第二建設社屋

――貴社の創業の経緯、業務内容を簡単にお教えください。

入江:弊社は、私の祖父が創業し、2代目が私の父そして私で3代目になり、この6月でちょうど52期が終了した建設会社です。
始業当初は、通常の一般土木を主としていましたが、創業者が昭和49年に世界で初めて岩接着工法を開発したのですが、岩接着工法というのは、落石危険箇所や、景観保全箇所の岩盤類をモルタル系の接着材で固定安定化するといったものです。
それ以後、徐々に全国に当工法が浸透するにつれ、そちらにシフトしてきました。現在は当社開発の岩接着DKボンド工法が業務の主体となっています。

――このたび、膨大な840ページの事例集をまとめられましたが、その内容を教えてください。

入江:本誌は、全4章構成で1章;業務・管理概論 2章;外交対応関連 3章;工法ノウハウ関連 4章;品質性能試験関連となっています。どの内容も会社内外問わず問題発生時における対処実例やその構えの提言などの記録となっています。

そのために、内容には慎重を期す箇所も多く、基本的には社内閲覧専用としています。

――どうしてこういう事例集をつくろうと思われたのですか? きっかけ、動機のようなものを教えてください。

入江:今回の事例集は、その使用データの8割程が先代社長の作成データです。
創業者が開発した当社の工法ですが、その後体系化され全国的に認知される過程は、先代社長の時代が主でした。そのためにあらゆる場面のケーススタディが先代の経験に凝縮されています。私は3代目ですが平成30年現在、社長経験はわずか2年弱の43歳です、10年近く先代と業務を共にした経験があるとはいえ、現実的に若輩社長です。
このことを私は、決してネガティブなことだけで捉えていませんが、総合的な会社力を考えると先代の時代と比較して劣勢なことは私自身否めない事実です。
この状況を緩和し、過去弊社が培った経験を今に活かす参考書として今回の事例集をまとめることを計画しました。

岩接着DKボンド工法事例集

岩接着DKボンド工法事例集

――編纂に当たり、苦労したこと、またこだわったところはどこですか?

入江:今回の事例集が全体で800ページ強ですが、掲載コンテンツを選別する際にはこの3倍近くのデータから選びました。
その選別作業に1年近くを要したのですが、それが大変でした。
その選別のこだわりとしては、社員があらゆる業務的な問題に直面した時に対策イメージの参考になるものを選ぶということにポイントを置きました。

――まとめられた事例集をどのように活用しようと思いますか?

入江:社員一人ひとりが各種問題に対処できるようになるための参考書として活用していきたいです。
更にいえば、今回の事例集作成は、これを成し日常業務に過去のノウハウを活かすためのツールであるということです。
これにより会社力の総合的成長につながればよいと考えています。

――企業資料の保存・整理について、どのようにお考えでしょうか?

入江:社歴が数年の会社であれば、経営者、従業員も含め入れ替わりも少なく各種経験も自ずと共有できます。
しかし、経営者の交代や、熟練社員の引退など人の入れ替わりなどが起きるとそうはいきません。

それを、形に残して次の世代、後輩に円滑に伝えていくといった意味で今回のようなアーカイブはとても有意義です。

特に弊社のようなニッチ市場で特異な工法を運営している場合には、他には比較できうる情報そのものが存在しませんから、工法維持存続、発展を考え世間に安定的に存在する意味において特に重要なものです。

同時に現在の日本は、高度成長期に始業した多くの会社が創業50年を迎えてきています。
私も身をもって経験しましたが、世代交代などをきっかけとして、先輩方の努力や汗を記録伝承し、組織の核となるべき知的財産を目に見える形で構築しつつ先に進むのは組織にとって不可欠なことだと思います。